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口臭ケア

 デートの時はもちろん、できればどんな時でも息はさわやかでいたい。口臭予防をうたった商品が続々と登場するのも、気にする人が多いことの表れだろう。ただ、他人のにおいは気づきやすいが、自分にはあるのかないのか分かりにくいのが、やっかいなところ。口臭ケアとして心がけたいことを調べてみた。

「舌磨き」でさわやかに
 東京都渋谷区で飲食業を営む原口文一さん(60)が、口臭を気にし始めたのは5年ほど前だ。朝、起きた時など自分でも「ちょっとにおうな」と感じ始めると、何となく周囲の人に避けられているような気までしてきた。そこで、近くにある松尾歯科医院の松尾通・院長に相談した。
 松尾院長は口臭ケアに取り組んで10年以上。原口さんの歯の汚れや歯石を取り除くとともに、歯間ブラシ、デンタルフロスも使うていねいな歯磨きを指導をした。
 歯の手入れを続けるうち、原口さんは自然に気にならなくなった。今でも3ヶ月に1度はケアを受ける。松尾院長は「たいていの人は、口の中を清潔に保てば問題にならないレベルまでにおいを減らせる。ただ、定期的に歯科医院を訪れることが大切」と話す。
 日本歯科大の八重垣健教授によると口臭は鼻やのどの病気、糖尿病などで起きるときもあるが、9割以上は口の中に原因がある。はがれ落ちた細胞や歯ぐきからの血が舌の表面に付着し、それを細胞が分解して白い舌苔(ぜったい)ができる。舌苔から硫黄成分をふくむガスが発生しそれが口臭になる、という。
 歯周病や歯槽膿漏になるとガスも増える。「口臭を減らすには、歯周病の治療が第一」と話す。
 東京医科歯科大の川口陽子教授によれば、唾液とも大きな関係がある。唾液には口の中の汚れを落とす作用や抗菌作用があり、睡眠や緊張などで量が減ると口臭が強くなる傾向がある。食事で唾液が出て口の中の汚れが落ちると口臭も急激に減る。高齢になると量が減ったり歯周病が進んだりして、においが強くなることもある。
 川口教授や八重垣教授が「大きな効果がある」として勧めるのは毎朝、原因となる舌苔を落とす「舌磨き」だ。
 ただし、歯ブラシで磨くと舌の表面を傷めることがある。専用の舌ブラシを使う方がいい。吐き気を抑えるため、舌を思いっきり前に突き出し、呼吸を止める。舌の一番高くなっている部分から舌の先端に向けて軽くブラッシング。力を入れすぎないこと、舌のざらついた表面を舌苔と勘違いしないよう注意することが大切だ。
 さまざまな種類の対策グッズが市販されているが、科学的に効果が確認されたものは多くない。市販の洗口剤は、アルコールによる殺菌や香料で口臭を目立たなくする効果を狙ったものが大半だが、すぐに菌が繁殖してしまうため、効果は限定的だ。
 口臭を減らすことが実験で確認されているのは、大阪市の歯科医薬品メーカー「ビーブランド・メディコーデンタル」が開発した、塩化亜鉛入り洗口剤「ハイザック」(税別2,200円)。亜鉛イオンが、原因になるガスと結びついて無臭化させる。一部の歯科医院や、インターネットによる通信販売で購入できる。
 応急的に口臭を少なくしたい時に有効なのは、砂糖入りのチューインガム。砂糖が口の中を酸性にし、細菌の働きを抑える。シュガーレスのガムは逆ににおいを強くしてしまうこともあるから、注意が必要だ。



 口臭の程度を調べるには、専用の機械を使って、吐く息の中の硫化水素など、においの成分の量を調べる方法もあるが、もっとも簡単で確実なのは、家族や歯科医に実際にかいでもらうことだ。
 直接かいでもらうことに抵抗があるならば、しばらく鼻だけで呼吸した後、太めのストローからゆっくりと口の中の息を吐き出し、反対側に相手の鼻を近づけてもらうなどの方法もある。
本人の「思いこみ」も
 市販の口臭チェッカーは、水蒸気などの影響を受けやすく必ずしも正確とは言えない。
 健康な人でもある程度の「生理的口臭」はある。他人がかいでも気にならないのに「強い口臭がある」と思いこんでしまう人が最近増えており、カウンセリングなどのケアが必要な場合もある。
 「生理的口臭までなくす」ことをうたう歯科医も増えているが、多くは保険が効かない自由診療。厳密な科学的検証がされていない治療法もあるため、自分の責任で納得して受診することが大切だ。


2005年12月6日の朝日新聞より