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シリーズ歯科 虫歯治療の今
定期健診も治療のうち

 昨年春、長男光(こう)ちゃんの1歳半健診で、上の4本の前歯に虫歯が見つかった。母の鈴木真紀子さん(31)は、ショックを受けた。歯磨きは心がけてきたつもりだが、虫歯は前歯の裏側で進んでいた。
 東京都杉並区内の保健センターで、歯科健診と相談を担当する医師の岡田弥生さんは「しっかりと歯磨きをしていけば、進行を食い止められますよ」と励ました。
 歯は細菌が糖分を取り込んで出す酸で溶けだす。しかし、唾液の作用で再びカルシウムが沈着する「再石灰化(さいせっかいか)」が起こり回復する。歯の表面は溶けては固まることを繰り返しているが、食べ物の残留時間が長かったり、細菌が多かったりすると、自然の修復が間に合わず、虫歯になる。
 真紀子さんは、おっぱいを与えながら寝かしつけるのが習慣になっていた。これが良くなかったようだ。母乳の糖分は、昼間なら唾液が洗い流してくれるが、就寝中は、唾液の量が減るので虫歯を作りやすい。
 前歯の表と裏、奥歯にもきちんと歯ブラシを当てる指導を受け、細菌の働きを抑える甘味料キシリトールのタブレット(錠剤)に加え、歯を強くするフッ素のスプレーを使い始めた。ちょうど時期も来ていたのでおっぱいもやめた。
 3か月に1度、無料の歯科相談に通い、歯や歯磨きのチェックを受けるようになって1年半、虫歯は進んでいない。
 真紀子さんは「ジュースやお菓子はできるだけ控え、ひざの上に寝かせてきっちりと歯磨きをしています」と言う。
 生えたばかりの歯は、表面が軟らかく、虫歯になりやすい。「でも」と20年近く乳幼児の歯を専門に診てきた岡田さんは言う。
 「歯磨きの方法や生活習慣を見直すことで、進行は止まり、健康な永久歯につなぐことができます」
 だから、歯の変化を定期的に診ていくことも、虫歯の“治療”のひとつということだ。実は、乳歯だけではなく、永久歯でも初期の虫歯なら、経過観察での対応が選択肢になる。
 虫歯が見つかった時、歯磨きの改善やフッ素の利用などで再石灰化を促しながら経過を観察するのか、削って埋める処置が必要なのか─歯科医の判断力が問われる所だ。
 かつて虫歯は見つけしだい削って埋めるという考え方があった。しかし、一度削った歯は元には戻らず、次はそこから再発する。初期の虫歯なら経過を観察し、進んだ虫歯もできるだけ小さく削るという考え方が広がっている。虫歯治療の今を紹介する。


2005年9月21日の読売新聞より