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顎関節症

 口を開こうとするとあごの関節が鳴ったり、筋肉が痛んだりして口がうまく開かなくなる顎関節症は若い女性に多い。頭痛や肩凝り、腰痛、不眠の原因にもなるとされる現代病の一つだ。日本顎関節学会評議員の丹根(たんね)一夫・広島大大学院教授(57)=歯科矯正学=に聞いた。

ストレス あごに負担 筋肉訓練で組織回復
 ─口を開け閉めする時にズキッと痛んだり、音がしたりするという人は珍しくありません。
 顎関節からの痛みや雑音が、この病気の典型的な症状。普通だと指が縦に3本入るぐらい口が開くところが、2本程度(3センチ)しか開かないこともある。こんな症状がある人は成人の20〜25%に上るといわれている。

関節円板にずれ
 ─音がしたり動きが悪くなったりする理由は。
 顎関節は体にある関節では唯一、回転だけでなく前後に大きくずれる複雑な動きができる。上下の歯をかみ合わせやすくするための仕組みだ。頭の側頭部と下あごの骨の間にある関節円板という軟骨が前後に動くことで、関節を動きやすくしている。
 ただ、関節円板の後ろ側にある組織は伸びやすく、前にずれて戻らなくなる場合がある。下あごの骨と引っ掛かるようになるとポキッと音がしたり、口を開けづらいなどの症状が出てくる。ジャリジャリと音がしたら、関節円板がもっとずれて骨同士がこすれ始めた証拠だ。
 ─ひどくなると、あごが外れる?
 それは顎関節の脱臼で、関節痛とは違う。脱臼した時は下あごに手を添えて下に引っ張りながら後ろに送るようにすれば、パクッとはまって治る。関節症の場合は簡単には治らない。

歯ぎしりも影響
 ─「かみ合わせの悪さ」は原因でしょうか?
 かみ合わせだけではない。あごに負担が掛かるような生活習慣との関係も指摘されている。睡眠中の歯ぎしりや食いしばりがそうだ。心理的なストレスが影響している場合も少なくない。
 「下あごの発育が悪いと顎関節症になりやすい」という調査結果も出ている。柔らかい食事に慣れている人は下あごの発育が悪く、あごの筋肉も衰えやすい。ものをかむ時の動きが支えられず、関節を痛める原因になると考えられる。

薬・注射や装具
 ─治療はどのように。
 まず、磁気共鳴画像装置(MRI)やエックス線撮影で、関節円板の位置と顎関節の状況を確認する。関節に炎症があれば、消炎鎮痛剤を飲んでもらう。骨の擦り減り方がひどい場合は顎関節に針を挿入し、内部を洗浄した後でステロイド剤を注入する。
 半年程度はあごを大きく動かさないよう用心することが大事。あごの関節を安静にし、かみ合わせの位置を良くするためのスプリント(装具)や、歯ぎしりを軽減するマウスピースを用いる場合もある。よほどの事がない限り手術することはない。
 ─口を開ける訓練やストレッチは効果ありますか。
 口の開け閉め、あごを横に動かす、首や肩のストレッチといった筋肉訓練は、硬くなった顎関節や組織の回復に役立つ。関節や筋肉の痛みが治まった後で主治医と相談しながらやるのがいい。
 ─どこの科に受診すればいいか迷います。
 症状がある人で、治療を受けているのは5人に1人にとどまっているのが現状だ。顎関節は他の関節と全く構造が違うので、専門とする口腔外科か矯正歯科に相談してほしい。
 ストレス社会を反映した「現代病」ともいえるだけに、生活習慣を見直しながらストレスをためないように心掛けることも大切だろう。





2006年4月12日の中国新聞より