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シリーズ歯科 矯正治療2
抜かずに済ませたいが…


 矯正治療の到達点は、良いかみ合わせと歯並びになることだ。だが、その方法や考え方は歯科医それぞれで異なり、治療法に関する研究グループは国内だけで30はある。
 患者にとって気になることの一つは、抜歯が必要かどうかだが、これも歯科医によって考え方が違う。記者の中学3年生の長女(15)は、下の歯が乱ぐい歯で、上は中央から2番目が片側だけ永久歯が生えず欠損した状態。学校の歯科健診では不正咬合を指摘されてきた。
 そこで、系統の異なる3人の矯正歯科医を受診し、治療方針を聞いた。
 A.上下ともに抜歯が必要。上は左右対称にし、下は重なりを解消するため
 B.上は抜歯して左右対称にする。下は、奥歯を後ろにずらすことで、全体を広げず抜歯をせずに治す
 C.上の欠損した部分に下の歯を移植するなどすべての歯を生かす
 三者三様の提案。治療の時期についても、AとBは歯を動かしやすい今すぐ。Cは大きな成長が終わった18歳前後に、と分かれた。
 日本矯正歯科学会長で東京医科歯科大矯正科教授の相馬邦道さんは「矯正治療は様々な方法が出ては消えという試行錯誤を繰り返している最中だ」と話す。
 9割以上が非抜歯の歯科医もいれば、「狭い歯列が多い日本人は、抜歯しないと理想的な歯並びになりにくい場合が多い」(東京・福原矯正歯科クリニック院長の福原達郎さん)という見方もある。
 もし、抜かずにすむなら、その方が望ましいが、そこにこだわると、落とし穴も潜んでいる。
 10年前に治療を受けた神奈川県の事務員B子さん(36)。上前歯がハの字にねじれ、八重歯が飛び出していた。通院先は歯を抜かない方針だった。
 2年の治療で歯並びは整った。ところが友人から「歯全体が前に飛び出ている」と言われ、ショックを受けた。重なった歯をそのまま整えると全体が広がってしまいます。まもなく前歯もかみ合わなくなり、福原さんが再治療を任された。
 最近は矯正技術の進歩で、歯全体を後ろに下げたり、特別な器具で歯列を広げたりして、抜かずにきれいに治療できるようにもなってきたが、非抜歯も場合によりけりだ。
 「骨格も歯の生え方も一人ひとり異なり、画一的な治療はできない。複数の専門家の意見を聞くべきだ」と福原さんは強調する。
 複数の専門家の意見を聞いた記者の長女は、「明るい雰囲気がいい」とBでの治療を希望した。しかし、中3で忙しく、「奥歯のかみ合わせはしっかりしている」と言われたこともあり、取りあえず治療は先延ばしにした。


抜歯、非抜歯の長所と短所
抜歯/長所=日本人特有の狭い歯列に並べやすい
短所=歯が少なくなりかむ力が弱くなる可能性がある、舌の入る空間が狭くなり口呼吸にある恐れがある

非抜歯/長所=健康な歯を抜かずに済み、将来残る歯を多くできる
短所=狭い歯列では並びきれず次第に歯並びが崩れる可能性がある


2006年5月12日の読売新聞より