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医療ルネサンス 歯周病2
「GTR法」で組織再生


 東京都板橋区の整形外科医、初海[はつみ]茂さん(76)は、若いころから歯磨きの時に歯肉から出血した。60歳を過ぎてからは、歯肉の腫れや痛み、歯のぐらつきに悩まされ、近所の歯科医院に通ったが良くならなかった。
 「歯茎が下がっているので、クーラーを入れると冷気で歯が痛くて、治療に集中するのが大変でした」
 このため12年前、日本大学歯科病院(東京都千代田区)を受診。進行した歯周病と診断され、歯周ポケットから歯周病菌を除去する歯石除去や、歯の根のクリーニングなどの基本治療を受けた。
 炎症は治まり、歯周ポケットも浅くなった。しかし、左上の犬歯は、歯を支える歯槽骨の一部が溶けてぐらついていた。
 歯周ポケットが深くなると、歯茎を切開して歯垢や痛んだ組織を取り除く外科手術が行われる。ポケットは浅くなり、炎症は止まる効果はあるが、歯槽骨などの歯周組織は回復しない。
 そこで行われたのが、GTR(組織再生誘導)法。外科処置の際に、歯根と歯肉の間に合成繊維の特殊な膜を挿入し、歯槽骨などの歯周組織を再生させる。

 
痛んだ組織を取り除くだけでは、すき間に歯肉が入り込み、歯槽骨などの再生を妨げてしまう。GTR法では、歯肉の入り込みを膜で防ぎ、歯周組織が自然に再生するためのすき間を作る。1か月ほどで、歯を支えられるようになる。
 初海さんは「犬歯は今もぐらつかず、何でも食べられます」と喜ぶ。趣味のゴルフでは歯を食いしばれるようになり、スコアが安定。3年前からは、アルトサックスのレッスンに通う。
 進行した歯周病の画期的治療法だが、膜の固定などに高度な技術が必要で、すべての歯を救えるわけではない。歯槽骨の壊れ方や程度によっては、膜を適切な位置で支えるのが難しい。膜を歯肉で完全に覆う必要があるため、歯肉に弾力がない歯の裏側の歯槽骨が溶けた場合などは適さない。
 健康保険は使えず、同病院など一部の大学病院では、治療費の一部で保険が使える高度先進医療として受けることができる。同病院での自己負担は4〜7万円になる。
 挿入した膜は、約1か月後に歯肉を小さく切開して取り出す。近年登場した「コラーゲン膜」や「合成高分子膜」などは数週間で自然に溶けて、再度の手術が必要ない。
 初海さんの治療を行った同病院院長の伊藤公一さんは「歯と歯の間の歯槽骨が溶けた場合などに、GTR法は最適」と話している。



2006年9月6日の読売新聞より