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医療ルネサンス 歯周病4
悪玉菌を乳酸菌で制す


 歯周病菌には多くの種類があるが、中でも「Pg」と呼ばれる菌が悪玉とされる。歯周病の治療は悪玉菌との戦いでもある。
 神奈川県綾瀬市の建設業、大久保勝さん(44)は、20歳代から、歯磨きで血が出るなどの症状があった。年齢を重ねるほどに悪化し、40歳代になると、つばを吐くと血が混じり、前歯の多くが触ると揺れた。
 このため、2003年9月に市内の武内歯科医院を受診。唾液を取って歯周病の指標になっているPg菌を調べたところ、その割合は口腔内の総菌数の1.7%に達していた。
 口の中には、約1000億個の菌がいる。大部分は悪さをしないが、Pg菌の割合が総菌数の0.01〜0.02%を超えると、歯周病が進んでしまう。
 大久保さんは、歯周ポケットから菌や歯石をかき出す治療を受け、翌年1月には、Pg菌の割合が0.6%に低下した。それでも基準値よりかなり高く、再び菌数が増える恐れがあったため、薬で歯周病菌をたたく治療法「3DS」(歯科薬剤到達法)を受けた。
 3DSは、歯型に合わせた樹脂製マウスピースを作り、その内側に、うがいにも使うヨード剤や、歯周病専用の抗菌剤を塗って歯にかぶせる。マウスピースを用いることで、薬が唾液で薄まらず、口内に薬が広がらない。
 治療は1週間以内に集中させる。同医院では、外来でヨード剤を塗ったマウスピースを5分間付ける。そして自宅で、抗菌剤を塗ったマウスピースを寝る前に付けて朝に取り外す治療を2回行う。
 その結果、Pg菌はほぼゼロになり、今もその状態を保っている。大久保さんは「歯のぐらつきや出血もなくなりました」と喜ぶ。
 しかし、耐性菌を生む危険がある抗菌剤の使用には、慎重な意見もある。そこで注目されるのが、歯周病菌を特定の乳酸菌で殺す方法だ。
 東海大学医学部と日本大歯学部の共同研究で、口の中にいる乳酸菌「LS1」にPg菌の殺菌効果があることが確認された。軽度の歯周炎がある成人約100人に、LS1の錠剤を1日3回、4週間なめてもらい、口内のLS1量を増やしたところ、Pg菌が平均で10分の1に減ったという。
 LS1は、歯周病菌が周囲に張り巡らすバリアの中まで入り込み、菌を攻撃できる可能性が高い。
 日本大歯学部助教授の菅野直之さんは「一般の人が簡単に買える形で普及させたい」と話す。「菌をもって菌を制す」方法が、これから注目されそうだ。


LS1(ラクトバシラス・サリバリウスTI2711)
口腔内の常在菌で、作り出す乳酸が歯周病菌を殺す。口の中の乳酸濃度が高まると虫歯の原因になるが、LS1は自ら作り出す乳酸によって死滅するため、過剰な濃度上昇は起こらないと考えられている。LS1の錠剤は、一部歯科医院やインターネットの通信販売などで購入できる。

2006年9月8日の読売新聞より