Q1むし歯を放っておいたら痛くなくなった。もう治療しなくてもOK?
激しい痛みを通り越すと、無痛が訪れます。でもこれは治ったからではありません。歯髄(いわゆる神経と呼ばれるもの)が死んでしまったためなんです。これを放っておくと、炎症はさらに根の周辺へと広がり、感染が全身に及ぶ可能性もあります。まだ完全に手遅れではないので、かかりつけの歯科医へ行ってください。
Q2歯みがきさえ毎日しっかりすれば、むし歯は予防できる?
むやみやたらとブラッシングすることが歯にとってベストとはいえません。つまり、正しいブラッシング法こそ、むし歯や歯周病予防につながります。ゴシゴシ乱暴にみがくのは、かえって歯を削って逆効果の可能性もあります。歯みがき粉をたっぷりつけるのも、歯を痛めるおそれがあるので注意してください。
Q3むし歯って感染するの?
生後しばらくは赤ちゃんの口の中には、むし歯菌はありません。歯が生えてきて、お母さんやお父さんからお子さまへ、軟らかくかみ砕いた食べ物を口移しで与える(フードキス)ことや、同じスプーン、はしを使って食事を与えることがあります。この時に食べ物と一緒にむし歯菌などの病原菌も移してしまい、お子さまがむし歯になったり、お口の中がむし歯になりやすい状態になったりします。従って、歯が生えてきてから間もない時期のお子さまをお持ちの保護者は、まずご自身のむし歯や歯周病の治療を済ませ、食前に歯みがきやうがい薬でお口の消毒を済ませてから、お食事を始めて下さい。
Q4小さなむし歯は自然に治るって聞いたんだけど…?
“小さな”の程度によります。
本来むし歯は、むし歯菌の定着による感染ですから、感染を起こしている限りは、自然には治りません。しかし、“目で見えないような小さな”感染は、その都度、唾液による修復作用により修復されているのです。
唾液には、口腔内環境を常に良好に保つための殺菌作用や修復作用があります。その意味では、自然治癒能力があるのですが、口腔内環境の悪化をもたらす食生活や生活習慣により、実際にはそれを上回る破壊が起ってしまい、「むし歯」と認識される程度まで破壊が進行してしまうと自然に治ることはありません。
かかりつけの歯科医院で定期健診を受け、予防にも心がけましょう。
Q5歯の神経を取るってどういうことですか?
歯の神経を取るっていうことは、その歯を殺してしまうことです!
歯の表面は硬いエナメル質で覆われており、その内側には象牙質があります。その象牙質の中に空洞(歯髄腔)が有り、歯の根っこの先から神経や血管、リンパ管などが入っていて、その歯を生かしています。しかし、むし歯が深くなると、細菌がこの神経の入っている空洞に入り、炎症を起こします。困った事にいったん炎症を起こすと痛みが出てきますので、症状を改善するためには残念ながら神経や血管、リンパ管なども含めた全てを歯の中から取り去ってしまわなければなりません。
つまり、“神経を取る”ということは、血管・リンパ管などの歯の生命を維持するもの全てを失うことになるのです。当然、死んでしまった歯は生きている歯に比べると、その寿命が短くなることが予想されます。こうなる前に、早めの治療を心掛けましょう。
Q6痛くないのにむし歯の治療をしなくてはいけないのですか?
ある程度進行したむし歯は、自然に治ることはありません。
なんらかの原因でむし歯の進行が遅くなることはあっても、放置していれば確実にひどくなっていきます。初期のむし歯は痛みがありませんが、進行して神経に近づくと痛みが出てきます。痛みが出る前の初期の段階で治療しておけば、削る量も少なく、治療期間も短くてすみます。
また、「以前痛かったけど放っておいたら痛くなくなった」という場合は、最も危険です!。このような場合の多くは、すでに神経が腐ってしまい、細菌がアゴの骨の中に入り込み炎症を起こします。こうなっては大変です。最悪の場合、歯を抜かなければならなかったり、アゴの骨の治療が必要になることもあります。
痛くないのは決してむし歯の進み具合と同じではないのです。どんな病気でも、早期発見、早期治療があなたの健康を守ります。
Q7むし歯と肩こりって関係あるの?
お口の中にむし歯ができると、無意識のうちにむし歯のある方を避けてかむようになります。
そうなると、かむ時にアゴを動かしている周囲の筋肉や肩までの筋肉を含めてバランスがくずれ、使う片方だけの筋肉に無理が重なり、肩までこることがあります。
まずはかかりつけの歯科医院でむし歯の治療をしましょう。
Q8一度治した歯は、もうむし歯にならないの?
一度治療が済んで、つめたりかぶせたりした歯はもうむし歯にならないと思っていたら、そのうち臭いがしたりポロっとはずれたり…。そんな経験ありませんか?
治療した歯とつめもの・かぶせものの境い目に汚れ(歯垢・プラーク)がたまると、そこから再びむし歯になってしまいます。日頃から、つめもの・かぶせものと歯の境い目や歯の周りを歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなどできちんと磨くことをお奨めします。
Q9神経を取ったら歯が弱くなる?
歯の神経(歯髄)がある生きている歯を“生木”だとすれば、歯髄のない死んだ歯は“材木”に例えることができます。同じ太さの生木と材木があるとすれば、ご存知のように生木には、“しなり”があるのでなかなか折れにくいのですが、材木には生木ほどの“しなり”はありません。また、生木には根から絶えず水分や栄養分が供給されますが、材木ではそうもいきません。生きている歯よりも死んだ歯のほうが、その寿命も短くなります。
ですから、できる限り歯髄を生きたまま残して治療するほうが良いといえますが、むし歯が深くてやがて死んでいくのが予想される場合や、すでに痛くて我慢できないほど症状が進んでしまっている場合には、残念ながら歯髄を除去してしまうことも仕方がないと思われます。
しかし例えその歯が材木になったとしても、後世にまで残っている立派な木造建築物もあるのですから、がっかりすることはありません。それよりもこれを教訓として、神経を取ってしまった歯はもちろん、他の歯がこのようにならないように“歯を絶対に大切にするぞ!”という気持ちを持ち続けていくことが大事です。
Q10むし歯になりやすいのですが、あきらめるしかないの?
そんなことはありません。
むし歯ができるのは、@弱い歯質、Aむし歯菌、B甘いものという条件が揃うからです。ですからこれらの条件を可能な限りなくしていけばいいのです。
まず、歯質を強化するためにはフッ素の応用が効果的です。乳幼児期の定期的なフッ素塗布や大人になってもフッ素入り歯みがき剤の使用をお奨めします。
むし歯菌については、自分自身による毎日のセルフケアが大事です。菌が溜まりやすい歯と歯ぐきの境い目や治療したつめもの・かぶせものの周りなどはより丁寧にブラッシングしましょう。フロスや歯間ブラシ、殺菌剤入りの歯みがき、デンタルリンスなどの使用も効果的です。
甘いものは無理にやめる必要はありませんが、回数を減らして、ダラダラ食べるのはやめましょう。歯につきやすいものはなるべく避ける、水やお茶を飲んでお口の中に食べかすが残らないようにするなどを心掛けましょう。そしてなにより大切なことは、食べたり飲んだりした後ですぐにブラッシングすることです。
これらのうち1つでも実行できれば、かなりの効果がきっとあるはずです。