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医療ルネサンス 歯周病3
たんぱく質で回復促進


 東京都渋谷区で歯科医院を開く今城義一さん(63)は、若いころから、歯茎の腫れや痛みなどの歯周病に悩まされてきた。
 歯が悪い歯科医では、言葉に説得力がない。今城さんは念入りに歯を磨き、歯石を取った。しかし、歯周病は治らず、周期的に歯肉の痛みに悩まされた。そんな時、よみがえる子どものころの記憶があった。
 今城さんの父親も歯科医だった。自宅で開業し、治療風景を日常的に見て育った。40歳代で総入れ歯になった。
 「父も重い歯周病で歯がぐらぐらだったのでしょう。自分で歯を抜く姿が、今も忘れられません」
 歯周病は通常、歯槽骨などの破壊がゆっくり進むが、中には進行が早く、治りにくいものもある。
 4年前に本格的な治療を受けようと訪れた大学病院で「上は総入れ歯、下も部分入れ歯になるのは避けられない」と診断された。あきらめかけたが、翌年、知人の勧めで受診した千代田区の弘岡歯科医院(スウェーデンデンタルセンター)で、「できるだけ残るようにしましょう」と言われ、徹底した歯周病治療を受けることになった。


 
 
歯周ポケットから菌をかき出す処置は、歯科医が麻酔をかけた上で、歯科衛生士が1本約15分かけて入念に行った。切開手術も効果を示し、半年後、歯周病は劇的に改善した。
 だが、右下の第2小臼歯は歯槽骨が半分近くに減り、切開手術だけではぐらつきをなくすのは困難だった。そこで切開手術と同時に、歯周組織の再生治療「エムドゲイン法」を受けた。
 前回紹介したGTR法が、歯周組織を再生させる空間を設けるのに対し、エドムドゲイン法は、歯周組織の再生を促すたんぱく質を歯の表面に塗り、より積極的に歯周組織を回復させる。院長の弘岡秀明さんは「平均すると、数ヶ月後には失われた歯周組織の40%程度が再生します」と話す。
 ただ、根が分かれている奥歯では、効果が出にくいなどの課題もある。保険が使えず、同院では約15万円かかる。
 これらの治療で歯の悩みから解放された今城さんは、笑顔で語る。
 「昔は、歯周病の治療は困難だと考えられていました。しかし、徹底的な歯垢除去などで改善することを身をもって知り、日々の診療でも、歯周ポケットの掃除などに時間をかけるようになりました」
 自分の治療体験を患者に話すことも増えた。
 「歯が健康だと、気持ちまで元気になります。何をやるにも力がわいてきますよ」


エムドゲイン法
スウェーデンで開発され、国内でも導入する医療機関が増えている。歯が生まれる際に活発に働くたんぱく質を利用し、歯周組織を再生させる。使用するたんぱく質はブタから抽出されている。


2006年9月7日の読売新聞より